映画「万引き家族」は生々しくて気持ち悪いと感じるほどリアル

万引き家族

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「選んだのは、絆でした」

既に死亡している親の年金を、家族が不正に受給していた事件から着想を得た、映画「万引き家族」。

是枝裕和監督は、貧困家庭や社会の最底辺を描こうといった意図はなく、むしろ、そこにかろうじて転がり落ちないように集まった「家族の絆」を描こうと思ったそうです。

それぞれが抱えた孤独を隠すように集まり家族を構成する様は、滑稽のようでありながら、笑いの絶えない姿に本当の家族よりも幸せな瞬間があったのかもしれないと思ってしまいます。

しかし、カンヌでパルムドール受賞など、高評価の一方でSNSなどでは「生々しくて気持ち悪い」と感じた人もいるようです。

今回は、国内外の評価と、SNSでの「気持ち悪い」というキーワードで、「万引き家族」を深掘りしていきます!

「万引き家族」配信サイト

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万引き家族
配信状況
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映画「万引き家族」概要

作品概要
原題万引き家族
製作日本
公開日2018年6月8日
上映時間120分
ジャンルドラマ(PG12)
監督・脚本是枝裕和
音楽細野晴臣
キャストリリー・フランキー
安藤サクラ
樹木希林
松岡茉優
城 桧吏
佐々木 みゆ

あらすじ

高層マンションの谷間にポツンと取り残された今にも壊れそうな平屋。

そこに治と信代の夫婦、息子の祥太、信代の妹の亜紀の4人が転がり込んで暮らしている。

彼らの目当ては、この家の持ち主である祖母の初枝の年金だ。それで足りないものは、万引きでまかなっていた。社会の底を這うように暮らす家族だが、なぜかいつも笑いが絶えず、口は悪いが仲よく暮らしていた。

そんなある日、治と祥太は、近隣の団地の廊下で震えていた幼いゆりを見かねて家に連れ帰る。体中傷だらけの彼女の境遇を思いやり、信代は娘として育てることにする。だが、ある事件をきっかけに家族はバラバラに引き裂かれ、それぞれが抱える秘密と切なる願いが次々と明らかになっていく──。

解説

物語が始まり、登場するのは裕福ではないけれども、肩を寄せ合い、仲睦まじく暮らしている「家族」の様子でした。

観客は、若干の違和感を感じながらも「家族」を描いた作品なんだろうと思うことでしょう。

しかし、物語が進むにつれ、果たしてこの人たちは「家族」なんだろうかと思うようになってきます。

中盤以降、決定的な出来事が起こり、これが本当の「家族」ではなかったことに気付かされることになります。

しかし、家族ではないけれど、”これ”は「家族」だったのでは…と思うかもしれません。

観るものの視点によって変わる「家族」のかたち

家族を描き続けている是枝監督の特徴である、観るものの視点によって、ガラッと変わる「家族」の”かたち”

この映画に関しては客観的に観れば、”家族ではない”と感じると思います。

しかし、登場する6人の、どの視点で観ても”これは家族”として観ることができるのではないでしょうか。

外から見るか、内から見るか。その判断は観客に委ねられています。

万引き家族の受賞歴

映画

映画「万引き家族」は国内外で様々な賞を受賞しました。国内では日本アカデミー賞で最優秀作品賞を筆頭に8部門で、栄冠を獲得。

 海外映画賞 受賞一覧

年度映画祭受賞ジャンル受賞対象
2018年カンヌ国際映画祭パルム・ドール是枝裕和
2018年ミュンヘン国際映画祭アリ・オスラム賞(外国語映画賞)是枝裕和
2018年アンタルヤ国際映画祭監督賞是枝裕和
2018年バンクーバー国際映画祭外国長編映画観客賞是枝裕和
2018年アジア太平洋映画賞最優秀長編映画賞万引き家族
2018年ロサンゼルス映画批評家協会賞外国語映画賞万引き家族
2018年ニューメキシコ映画批評家協会賞助演女優賞安藤サクラ
2018年サンディエゴ映画批評家協会賞外国語映画賞万引き家族
2018年ボストン映画批評家協会賞外国語映画賞万引き家族
2018年フロリダ映画批評家協会賞外国語映画賞万引き家族
2018年フロリダ映画批評家協会賞助演女優賞安藤サクラ
2019年パームスプリングス国際映画祭FIPRESCI賞万引き家族
2019年ゴールデン・ビートル賞外国語映画賞万引き家族
2019年国際シネフィル賞主演女優賞安藤サクラ
2019年セザール賞外国語映画賞万引き家族
2019年アジア・フィルム・アワード作品賞万引き家族
2019年アジア・フィルム・アワード音楽賞細野晴臣

キネマ旬報ベストテンでも1位を獲得するなど、国内の賞レースはほぼ獲得しました。

また、カンヌ以外での海外の映画賞も多数獲得しており、是枝監督は名実ともに日本を代表する監督になりました。

世界での評価

映画「万引き家族」は、第71回カンヌ国際映画祭にて、最高賞のパルム・ドールを受賞。日本人監督の作品としては、1997年の今村昌平監督の「うなぎ」以来21年ぶりです。

その結果、普段、アート系の作品を視聴しない層も映画館に足を運び、これまでの作品よりも賛否を巻き起こした作品でもあります。

 批判の声もあった

高評価だった一方で、「万引きや犯罪を肯定している」 「これを世界に持っていくのは日本を貶めることになる」といった批判や拒否反応もあったようです。

では、世界の人々はどのように受け取ったのでしょうか。アメリカのサイトを例にみてみます。

米国映画批評サイトの「Rotten Tomatoes」は批評家のスコアと視聴者が投票するスコアで構成されるレビューサイトです。

「Rotten Tomatoes」とは

「トマトメーター」と呼ばれるスコアで、作品について肯定的な意見が60%以上を占めれば「新鮮(Fresh)」な映画判断され、赤いトマトマークが付けられます。

一方で肯定的な意見が60%を下回ってしまうと「腐った(Rotten)」映画として緑色のトマトマークが付けられます。忖度のないレビューが集まることから「辛口レビューサイト」と評されることもあるそうです。

では、万引き家族の得点を見てみましょう。

   批評家 一般視聴者
 🍅 99%🍅 91%
   228人  1000人以上

このように、新鮮なトマトで、高評価のようです。

「夢中になってみた」「家族は崩壊しても愛はある」など、レビューの内容は映画としての面白さを感じた人が多い印象です。結末も好評だったようです。

他にもミステリアスな映画という捉え方であったり、是枝監督のアプローチに対しての賞賛で、決して日本に対して悪い感情を持つまでは繋がっていないようでした。

上部だけの評価

華やかなJAPANやTOKYOの印象が強く、日本の社会背景まではピンとこないのかもしれません。しかし、高得点とはいえ、分母の数がそれほど多くはありません。

同じくアジア映画で有名な「パラサイト」は479人の批評家と5000人を超える視聴者がレビューをし、それぞれ99%と90%の高得点を叩き出しています。

「万引き家族」は、やはりカンヌの反響は大きく、比較的海外でも視聴された日本映画にはなりましたが、どちらかと言えばアート系としての鑑賞だったようです。

そのため、まだまだ一般的とは言えず、一部の日本のレビューで心配された賛否両論とまではならなかったようです。

アート作品としてではなく、真正面からこの出来事を見た時に、どんな批評がされるのか少し興味があります。

公開から時間が経過し、極端なことにはならないでしょうが、分母が増えれば、これから賛否が別れるかもしれませんね。

映画「万引き家族」は気持ち悪いほど生々しい

映画評価

「万引き家族」に対して、気持ち悪いと感じた人もいるようですが、その気持ち悪いにもいくつか分けられます。

気持ち悪いと感じることで、自分の立ち位置や、生活レベルなどの尺度がわかるといったニュアンスの感想を持った人もいました。

行動が生々しくて…

家の散らかり方、品がなく、がさつな行動など、観客が気分を害すようなシーンが多々あります。

夏のシーンでは常に汗ばんでいるので、観ているこちらの方までむんむんしてきそうでした。

しかし、これらはあえて狙った演出で、俳優陣が話し合って目指した姿のようです。

例えば、治と信代のラブシーンがあります。これはリリー・フランキーさんと安藤サクラさんが 「平成で一番気持ち悪いラブシーンを演じよう!」と話し合った結果だそうです。

人のこと言えませんが、お二人のちょっと緩んだ体とネギの相性は抜群で、他所ではなかなか見られない独特の雰囲気の生々しいシーンとなりました。

映画ですので、この気持ち悪い生々しさというのは役者の皆さんの努力の賜物と言えるかもしれません。(褒めてます!)

そもそもタイトルが気持ち悪い

タイトルを含め、犯罪を肯定してるのではという意見もあります。

ちなみに、筆者は前職でコンビニを経営をしてまして、ちょうど常習の万引き犯を捕まえてやろうと、数日張り込んでた時期にこのタイトルを知りました。 

しかもカンヌでパルムドールを獲ったものですから、このタイトルが巷に溢れるのかと思うと、イライラが止まりませんでした(笑)

ただ、犯罪を肯定している映画ではないと思っています。この映画を観て憧れて万引きする人はいないでしょう。また、彼らの思い通りの結末ではないので、肯定していると言う意見には賛同しません。

リアルな万引きの実態を描く

万引きを見つけるのは、意識次第ですが、そこまで難しくありません。なぜなら、本人は素知らぬ顔で犯罪行為をしていますが、側から見ると表情も仕草も滑稽なのです。

しかし、稀に自分の家の冷蔵庫かっていうぐらい、罪悪感を微塵も感じさせない鮮やかな手口の人間がいます。

そのような犯罪者は未成年が多く、想像通り家庭環境に大いに問題があります。カップラーメンだけでも許し難いのにトッピングで煮卵も盗み、店の前で食べる。どういう環境で育ったら、こんな思考になるのだろうかと考えさせられました。

未成年の場合、ほとんどが単独犯ではありませんでした。兄弟、姉妹、カップル、仲間。この映画のように、何かしらの繋がりがありますが、その絆は強固なようで、脆かったです。

経験上、「万引き家族」はかなりノンフィクションに近いと言わざるを得ません。

気持ち悪いと思える人は幸せなのか

万引き家族」を観て、気持ち悪いと思う人は幸せだと言う意見もあります。

貧困や虐待という過酷な経験をしたことがない、そういったことから無縁だったからこその感想だということ。

幸せの尺度は人それぞれなので、ここでは言及しませんが、「万引き家族」に近い生活をしている人がいるであろうことは、知っておかなければいけない事実です。

個人的には治の大人になりきれない姿に同情をしてしまいました。

映画では生い立ちは描かれませんが、子供と同じ目線、同年代とうまく馴染めない様子、幼い思考に、これまでの恵まれなかったであろう人生と、今後も苦労するだろうと想像できるラストには、心が締め付けられる思いでした。

自分の幸せと比べる必要はないと思いますが、なんとも重い気持ちになる映画です。

まとめ

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「気持ち悪い」という、なかなか強めのワードを使って「万引き家族」をご紹介しました。

結局のところ、普通の生活ができない環境にいる場合は、犯罪の正当化などしてしまうのでしょうか。

独りよがりな思考になってしまっている治たちの姿に、気持ち悪いと言いますか居心地の悪さを感じながら鑑賞をしました。

しかし、この感覚こそが格差社会なのではとも思いました。

経験していないからこそ気持ち悪いと思ってしまう、一方で、あの散らかった生活、空間が当たり前の感覚の人もいる。

是枝監督が、どうにもならない社会の一部を描いた作品でした。