映画「ケイコ目を澄ませて」はつまらない？実際に観た感想と評価

『ケイコ　目を澄ませて』は聴覚に障害を持つ元プロボクサー・小笠原恵子の自伝『負けないで！』を原案に作成された映画です。

作中では「秀でた才能を持つのではない、不安や迷いを秘めた等身大の一人の女性」の物語が描かれています。映画監督は『君の鳥はうたえる』の三宅唱。主演は「岸井ゆきの」となっています。

映画の反響の中には「上映中だったけど寝てしまった」「思ったよりつまらなかった」という意見もあり評価は様々。

本記事では実際に映画を観た筆者が、作品の特徴と「つまらない」と感じてしまう理由を紹介していきます。

映画「ケイコ目を澄ませて」作品情報

公開日	2022年12月16日
監督	三宅唱
原案	小笠原恵子「負けないで！」（創出版）
脚本	三宅唱酒井雅秋
キャスト	岸井ゆきの三浦友和三浦誠己松浦慎一郎佐藤緋美中島ひろ子仙道敦子

聴覚障害と向き合いながら実際にプロボクサーとしてリングに立った小笠原恵子さんをモデルに、『きみの鳥はうたえる』の三宅唱監督が、不安や迷い、喜びや情熱などの様々な感情の間で揺れ動く等身大の一人の女性を描いた作品です。

秀でた才能を持つ主人公としてではなく、じっと〈目を澄ませて〉迷いながら、ひたむきに闘う女性を演じたのは岸井ゆきの。三浦友和をはじめとする実力派キャストが脇を固め、繊細でありながら力強い作品に仕上がっています。

「ケイコ目を澄ませて」あらすじ

嘘をつけず、愛想笑いが苦手なケイコは、生まれつきの聴覚障害で、両耳とも聞こえません。再開発の進む下町の一角にある小さなボクシングジムで日々鍛錬を重ねる彼女は、プロボクサーとしてリングに立ち続けています。

母からは「いつまで続けるつもりなの？」と心配され、言葉にできない想いが心の中に溜まっていってしまいます。「一度お休みしたいです」と書き留めた会長宛の手紙を出せずにいたある日、ジムが閉鎖されることを知り、ケイコの心が動き出します。

出演映画祭

2023年2月16日に開催されたドイツの「ベルリン国際映画祭」でプレミア上映されると、熱い賛辞が次々と贈られ、その後も数々の国際映画祭での上映が続いています。

国内映画祭でも『毎日映画コンクール』『キネマ旬報ベストテン』『日本アカデミー賞』『ブルーリボン賞』『高崎映画祭』で作品賞や主演女優賞などを受賞しています。

絶賛の声が溢れる中、思っていたより地味、退屈だったという感想もちらほらあるようです。

最近の映画やドラマはキャストが豪華で「え、この人が犯人？！」といった驚きや、伏線が巧妙に張られ、その回収の見事さに感動できるなどストーリーの作り込みが素晴らしい作品が多いように思えます。

一方、『ケイコ　目を澄ませて』ですが、はっきり言ってストーリーに抑揚はありません。

また、鑑賞中にふと気付き、エンドロールで改めて確認したのですが、劇中曲は一切ありませんでした（作曲家などのクレジットなし）。つまり、「ケイコ目を澄ませて」はドラマチックな演出をせず、ケイコの日常、心の葛藤を描いた内向きの静かな映画なのです。

映画に求めるものは人によって違うと思います。現実を忘れてド派手なアクションを思いっきり楽しみたい人、素敵なラブストーリーで感動したい人、謎解きサスペンスでハラハラしたい人など、様々だと思います。

『ケイコ　目を澄ませて』は敢えてドラマチックな演出を抑えていますので、その抑揚のなさで「つまらない」「退屈」と感じてしまう人がいるのかもしれません。また国内外で様々な受賞をしているので、そのために面白い映画なんだろうとハードルが上がっている可能性もあります。

ベルリン国際映画祭を皮切りに絶賛の声が贈られている『ケイコ　目を澄ませて』ですが、退屈だという声があるのは事実。しかしながら、この映画の持つ熱量は退屈という言葉を凌駕しています。

ベルリン国際映画祭アーティスティック・ディレクターのカルロ・シャトリアンさんのコメント

三宅唱監督の新作映画は、無駄なものを削ぎ、私たちの社会の中心に横たわる何か、つまり全ての人が限界を超えてでも自分を表現できる可能性を描く。岸井ゆきのが放つ圧倒的熱量に、心が動かされる
カルロ・シャトリアン

この言葉には、外国でも作品が絶賛された理由が集約されているのではないでしょうか。

人生において日常生活の中にある大切にしているもの。ケイコのように闘っている人もいれば、守ろうとしているものがある人もいるでしょう。

それを表現したのが岸井ゆきのの鍛え上げられた肉体と鋭い眼光であり、圧倒的熱量となって観客の心に突き刺さったのだと思います。