高齢者が高齢者を介護する老老介護、長年の介護疲れによる殺人や心中、孤独死…。少子高齢化の進む日本社会において、介護問題は非常に深刻です。殺人は決して許される行為ではありません。しかし、介護現場において殺人が起きてしまっているのが現実です。
映画「ロストケア」は、そんな日本社会の現実を考えさせられる映画です。
今回は映画「ロストケア」の興行収入と、実際に本作を見た筆者を含む観客の評価及びレビューを見ていきます。
映画ロストケアの興行収入や評価
#ロストケア
— 映画『ロストケア』公式アカウント (@lostcare_movie) March 23, 2023
本日(3/24)より、全国にて公開となります。
ぜひ、劇場にてご覧ください。
劇場情報https://t.co/AAHD3RhHd9#松山ケンイチ #長澤まさみ #鈴鹿央士 #坂井真紀 #戸田菜穂 #峯村リエ #加藤菜津 #やす(ずん) #綾戸智恵 #柄本明 #前田哲 #葉真中顕 #森山直太朗 pic.twitter.com/nid2BTFWBH
原題 | ロストケア |
製作 | 日活 東京テアトル |
公開日 | 2023年3月24日 |
上映時間 | 1時間54分 |
ジャンル | ミステリー/サスペンス |
監督・脚本 | 監督:前田哲 脚本:龍居由佳里 前田哲 |
キャスト | 斯波宗典:松山ケンイチ 大友秀美:長澤まさみ 椎名幸太:鈴鹿央士 羽村洋子:坂井真紀 斯波正作:柄本明 |
3/24に公開されてから38日間で30.8万人を動員。興行収入は4億8000万円となっています。
公開から2ヵ月近く経った5月現在、既に上映終了となっている劇場が多いためここからの伸びはそこまで見込めません。ミニシアターではこれから公開される劇場もあります。
ロストケアあらすじ
ある家で、介護を受けている1人の高齢男性と訪問介護センターのセンター長が死亡しているのが見つかった。現場の状況から警察は事件と事故の両方で捜査を進めていたが、捜査線上に上がってきたのはセンターで介護士として働く斯波宗典(松山ケンイチ)であった。
斯波は献身的な介護士であり、担当した高齢者の葬儀に出席し、家族へ労いの言葉をかけるなど介護家族からも信頼されていた人物。介護家族やセンタースタッフも皆「信じられない」と口にする。
斯波の聴取を担当することとなった検事・大友秀美(長澤まさみ)は調査していくうちに次第に、斯波が勤務している訪問介護センターでの死亡率が極めて高いこと、さらに、斯波が働き始めてからの死亡者が40人もいることに気が付く。
取り調べで対峙する斯波と大友。斯波はついに大友の前で「自分がやったことは殺人ではなく、喪失の介護、ロストケア。即ち、救いである。」と口にするのであった。検事として、そして自身も認知症で介護施設に暮らす母を持つ娘として、斯波の言葉に激昂する大友。斯波を調べていくうちに、大友は斯波自身の経験、そして、介護・福祉が抱える厳しい現実に直面する。
何が悪で、何が正義か。そして、大友が下す法の正義は何なのか。
ロストケアの評価
#ロストケア感想
— aco (@aco_9494) April 8, 2023
きっと誰のどの選択も気持ちも間違ってはいない。誰にも否定なんて出来ない。
大袈裟ではなく”絆という呪縛”で苦しんでいる人がこの国にどれだけいるのか、自分は穴に落ちないと言えるのか、とにかく考えさせられた。本当にたくさんの人に観て欲しい。素晴らしい映画でした。
ここからは映画「ロストケア」を観賞したツイッターでの口コミ評価と筆者の感想評価をお伝えします。
実際に鑑賞した評価
誰もがいずれ直面することになるであろう家族の介護問題を扱った本作。思わず自分自身に置き換えて考えてしまった観客も多いようで、かく言う私自身も鑑賞中、両親の顔が頭から離れませんでした。
「難しいテーマ」と言ってしまえばとても簡単なのですが、決してそんな一言には収まらない感情で胸がいっぱいになります。
物語前半では、介護家族が疲れ切った顔で家事を行ったり、認知症のある高齢者からモノを投げつけられたり怒られたりする描写があり、正直見ていて苦しい場面もありますが、とてもリアルに描かれているため介護の現場がいかに壮絶なものかがよくわかります。
物語が進むにつれてその苦しさは斯波の過去にも表れ、より一層痛みを伴って観客の心に訴えかけてきます。斯波自身認知症の父親の介護の経験があり、その経験がきっかけで介護士の職に就いているのですが、斯波の白髪に現れているように社会は彼と彼の父親を救うことは出来ませんでした。今の日本社会には救いが必要な人を取りこぼしている、即ち必要なセーフティーネットが機能していないことを痛感します。
一度穴に落ちてしまったらもう安全地帯に戻ることは出来ない社会で、安全地帯に居る側の人間は「絆」という言葉で片付けようとしているのではないでしょうか。「家族」という「絆」は「呪縛」と表裏一体なのであり、「絆」は介護においては「呪縛」に取って替わることに気付かされました。
このようなテーマを真正面から描いた映画が世に出て多くの人が目にすることでは現状は変わらないかもしれません。というか、正直変わらないでしょう。現状を変えるにはやはり、社会制度が変わらないといけない。今の日本に暮らす私達はもっと本気で考えないといけない段階に来ていると感じさせられる作品です。
そして、演技派俳優陣の迫真の演技は今年度見た映画の中で暫定第1位。大友と斯波の対峙シーンももちろんですが斯波親子のシーンは本当に凄いものを見たという感想に尽きます。画面や色の使い方等も含めてエンターテインメント作品としてもとても美しい作品だと思います。
SNSの口コミ評価
SNS上でも「見てよかった」と評価が高い本作。現在進行形で介護をしている方、介護経験のある方、介護職の方など介護当事者も多く鑑賞しているようです。
観た人にあなたの介護とはを問い来る作品。
— 春夏 冬㌠🍺 (@PDUwAF60yFMQOMG) April 5, 2023
介護と言う言葉は生き続けるので在るなら誰しも掴まるかも知れないと言う事。その時にあなたが体験するのは42人を殺した斯波宗典になるのか?それとも後に気付く大友秀美になるのか?少子化と言う言葉だけを良い様に使う人達になるのか?を。#ロストケア感想 pic.twitter.com/3KuPMZBNYk
#ロストケア感想
— うみふくろ@読書垢 (@ocean_bag_CW) April 1, 2023
同じ介護業に携わるだけに観る勇気が持てませんでしたが、やはり観て良かったです。
法や正義が賛美してきた家族の絆が、やがて首を絞めることを、背広を纏う安全地帯の側には他人事に映るのです。
老化に絶望し、生を諦める”救い”の悪行に対し、観る者の倫理観を試される映画でした。 https://t.co/76DeLWiWId pic.twitter.com/a9ywhg7TX2
誰もが頭ではわかっているけど、どこか見たくないものとして認識してしまっている問題である介護問題。そんな介護問題だからこそ、きっかけとして劇場で観たいという人も居るのではないでしょうか。
そして、「俳優陣の演技に強く胸を打たれた」「涙が止まらなかった」という声がとても多いです。今年度のアカデミー賞にノミネートされるのでは?といった声も見受けられました。
まとめ
介護現場での現実と問題を描いた映画「ロストケア」。鑑賞後、自分の身にも起きることとしてきっと誰もが考えさせられるはずです。介護問題について考えるきっかけとして、また自分自身の倫理観に問いかける本作。是非多くの方に観て頂きたい作品です。
予告でもわかるかもしれませんが途中で苦しくなる場面もあるので、心が健康な状態の時に観ることをおススメします。