Netflix「THE DAYS」はどこまでが実話?登場人物の現在と評価レビュー

THEDAYS実話

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「これは天災か、それとも人災か」

入念なリサーチを元に、福島第一原発事故を克明に描いたNetflixオリジナルドラマ「THE DAYS」。

2011年3月11日から始まった濃密な数日間の人間模様を3つの軸(最前線、政府、家族)が交差する重層的なドラマです。全8話からなるドラマ・シリーズとして丁寧に描くことにより、今まで知られなかった福島第一原発での出来事が明かされます。

あの日、あの場所に居合わせることになった人々の葛藤、恐怖、重責を出来得る限り忠実に描いた作品です。

16歳以上の視聴が推奨

地震や津波のシーンが出てきますので、当時のことを思い出してしまう可能性があります。十分配慮の上ご覧ください。

「THE DAYS」作品概要

タイトルTHE DAYS            
配信開始日2023年6月1日
話数全8話
企画・脚本・プロデュース増本淳
監督西浦正記
中田秀夫 
原案門田隆将
音楽ブライアン・ディオリベイラ
キャスト役所広司
竹野内豊
小日向文世
光石研
音尾琢真
遠藤憲一
石田ゆり子
でんでん

「THE DAYS」は、2011年3月11日の東日本大震災をきっかけとする福島第一原発の事故を描いた作品です。

4基の原子炉が同時に暴走するという人類がかつて経験したことのない危機を、入念なリサーチによって克明に表現。徹底的なリアリティを追求し、安易な英雄譚や美談にはしていません。映画ではなく全8話というドラマにしたメリットを生かし、時間を丁寧に使い、真実をあぶり出しています。

責任を問うのか、英雄としての称賛するのか。リアリティあふれるストーリーが、視聴者に幾多もの問いを投げかけてきます。

実力派俳優たちの共演

突然の大災害を受け、最前線で奮闘する主人公・吉田昌郎所長を演じるのは役所広司さんです。

詳細は後述しますが、実在した吉田昌郎さんは2015年に他界しており、役所さん自身はご本人に直接お話を伺うことは叶いませんでした。残された東電とのやり取りの映像や、音声を頼りにして役作りをしたそうです。

暗く危険と隣り合わせの中、復旧作業をする所員たちに、自分は明るいところで指示を出すだけでいいのか…。政府や本店とのギャップに苦悩する姿など、吉田所長になりきった演技は流石の一言です。

他にも実力派の俳優たちが脇を固め、ドラマ的な過剰な演技を捨て、取材に基づいた人物像で演じています。

プロデューサーの増本さん曰く、かつてないほどにスムーズにキャスティングが決まったそうです。まず、最初にオファーをしたのが吉田所長を演じる役所広司さん。その後、さまざまな俳優に声を掛けたそうですが、皆さんテーマに共感したと同時に、日本一の役者である役所広司さんと共演をしたかったようです。

ちなみに、この物語でもっとも視聴者に嫌われるであろう内閣総理大臣を演じたのが小日向文世さんですが、オファーの受け方が面白いです。増本さんは嫌われ役を引き受けてもらえるか心配だったそうですが、小日向さんに返事を伺うと「大丈夫ですよ。嫌われればいいんでしょ?」という粋な出演快諾だったそうです。

 円熟期を迎えた名優・役所広司

役所さんは2023年に行われた第76回カンヌ国際映画祭で、ヴィム・ヴェンダース監督の作品「PERFECT DAYS」の演技で最優秀男優賞を受賞しました。日本人が受賞するのは2004年の「誰も知らない」の柳楽優弥さん以来2人目です。世界中で注目を浴びる中、「THE DAYS」では極限状態で難関に立ち向かう主人公を演じています。

今回、「THE DAYS」に出演するにあたり、年齢的にもう沢山の作品には出られないだろうから、芯からお客さんに伝えられるもの、「これを忘れちゃいけない」と思える作品に参加したいと考えていたそうです。

現在67歳の役所さん。作品選びは慎重になってきているそうですが、23年夏には堺雅人さん、阿部寛さんらとともに日曜劇場「VIANT」にも出演するなど、精力的に活動されています。

多忙を極める役所さんですが、82年に4歳年上のさえ子と結婚しており、その後、夫婦で芸能プロダクションを設立しています。今もそこに在籍、スケジュール管理から出演の最終判断までさえ子さんが行っているそうです。

ちなみに、さえ子さんは仕事に厳しいと評判で、役所さんはさえ子さんの評価を一番気にしているそうです。妻の支えあってこその活躍のようです。

長崎市出身で1956年1月1日生まれの円熟期を迎えてなお活躍する役所広司さんから目が離せません。

役所広司(やくしょこうじ)主な出演映画
  • 「KAMIKAZE TAXI」(95)  第50回毎日映画コンクール男優主演賞
  • 「Shall We ダンス?」(96) 「眠る男」「シャブ極道」含め96年度の国内の主演男優賞を総ざらい
  • 「CURE」(97) 第10回東京国際映画祭 最優秀男優賞
  • 「うなぎ」(97) 第21回日本アカデミー賞主演男優賞
  • 「バベル Babel」(07) サンディエゴ映画批評協会 アンサンブル演技賞
  • 「三度目の殺人」(17) 第41回日本アカデミー賞 助演男優賞
  • 「狐狼の血」(18) 第42回日本アカデミー賞 最優秀男優賞
  • 「すばらしき世界」(21) 第95回キネマ旬報ベスト・テン主演男優賞

いくつかピックアップしましたが、実際は、ほぼ毎年のように受賞されています。

「THE DAYS」全エピソード概要

「THE DAYS」は、全8話からなるドラマ・シリーズです。

2011年3月11日から始まった数日間を濃密な人間模様を3つの軸(最前線、政府、家族)が交差する重層的なドラマです。世界中が固唾を呑んで見守った原発事故。マニュアルにもない想定外の連続で翻弄される政府や会社組織、一つの家族の悲しみを丹念に描いています。※東電と略されますが、ドラマでは東央電力という名称です。

1. 福島第一原発は水没しました

2011年3月11日、日本の首都・東京から225キロにある福島第一原発を高さ15メートルの大津波が襲った。波に飲み込まれて4基の原子炉は冷却機能を失い、暴走を始める。

2. 避難の必要はありません

事故の詳細を知りたがる日本政府。政府からの問い合わせに対し、福島第一原発の回答は「なにもわかりません」の一言だった。現場が何か隠しているのではないかと訝しがる政府。政府は会見で「慌てることなく自宅で待機するように」と国民に伝える。

3. 放出する放射性物質は少量です

冷却機能を失った原子炉では核燃料が溶け始め、原子炉格納容器の圧力が上昇を続ける。このままでは格納容器が破裂すると判断した東電は、内部のガスを大気中に放出するという手段を選択する。

4. 福島を見捨てることになる

全電源を失った状況では、遠隔スイッチで格納容器内のガスを放出することはできないため、人間の手で行うことになる。運転員の何人かが、後ろめたさを抱えながらも「この場から避難したいと言い出す。

5. うちの会社は狂ってる

温度上昇を続ける核燃料を冷却するため、福島第一原発の所長は原子炉への海水注入を決断する。しかし、東電本店からの返答は「政府のメンツを潰すわけには行かない。許可が出るまで待て」というものだった。

6. 俺は生きて帰るわけにはいかなくなった

必死の作業の末。格納容器の圧力がわずかだが、下がったという報告が入る。東電本店からは「今がチャンスだ」とさらに作業を急ぐように指示が下るが、所長はもう少し様子をみたい」と断るのだった。

7. 撤退基準を決めてください

2度の爆発で原発所員たちの士気は下がり、作業は停滞する。政府や東電本店は冷却作業の遅れにいら立ち、現場の所員たちに罵声を浴びせる。一方で格納容器の圧力は上がり続ける。所長は東電本店に所員の撤退を申し入れる。

最終回.日本崩壊のシナリオ

首相が旧知の科学者に助言を求める。日本の3分の1に及ぶ国土が汚染され、東京、神奈川、千葉など、日本の主要都市に数十年に渡り住めなくなるという絶望的なシュミレーションが首相に伝えられる。

THE DAYS作品評価

映画評価

THE DAYSを閲覧した感想レビューとSNSでの反応を見ていきます。

SNSの反応

6月7日時点で77の国、地域でTOP10入り&週間グローバル第5位を記録しました。海外での評判も良いようです。

しかし、日本でも評判ではありますが、あの当時を過ごした日本人であれば、観るのには相当の覚悟が必要なようです。

ネット上では賛否というよりも、日本人として観ておかねばならないという覚悟であったり、忘れないように観ておくといった、普通のエンターテイメント作品とは違う評価が多いように感じました。

筆者の作品評価

「ありがとうございました」

当時の記憶を思い出しながら視聴しましたが、観終わって真っ先に出た感情です。

ニュースやワイドショーなどで断片的に蓄積された情報と比べて、ドラマとはいえ「THE DAYS」の情報量は圧倒的で、また投げかけてくる疑問の質の違いに驚くばかりでした。吉田調書を朝日新聞が報じたニュースを断片的に捉え、一瞬でも吉田所長を悪と捉えてしまった自分が恥ずかしいです。

批判が多かったと記憶していた原発事故対応ですが、「THE DAYS」を観ると、何を批判し改善すべきだったのかは自ずとわかり、情報の取捨は考えなくてはいけないと思いました。

会社組織や政府のスタンスに落ち度がなかったかといえば無理があるかもしれません。ですが、問題にすべきは、普段から適材適所に的確な人材を置いていなかったことや、政府、マスコミ、会社の体質のことであり(ドラマでも匂わせるシーンが多数あります)、震災対応に対してではないと思いました。

確かに東電本店の傲慢さは見ていて不快になります。総理の高圧的な態度では必要な情報も上がって来なかった可能性も否定できません。不手際や不満もあったことと思います。検証も必要です。しかし、誰もが必死でした。この点については認めなくてはいけないと思ったのです

真っ暗で危険と隣り合わせの中で必死に作業しているのに、自分は明るいところで指示を出すだけでいいのか。吉田所長は自責の念に駆られますが、これは私たちにも言えることだと突き刺さります。

私は関東在住で、計画停電も経験しています。改めて電気がないと仕事含め、生活が成り立たないと実感したのを思い出しました。

ドラマ・シリーズとして丁寧に描くことにより、濃密な人間模様が映し出され、そのリアリティには緊張の連続でした。それに加えてブライアン・ディオリベイラさんが担当した、メロディ的ではない音楽が視聴者の不安を煽ります。感動を促す音楽では一切ありません。個人的には緊張感が続く効果を強く実感しました。

「THE DAYS」は、エンターテイメント+ドキュメンタリーという山の尾根を、ギリギリのバランスで渡り切ったという印象です。ありがちな美談にはなっていないのが良かったです。

批判の前に、その場で必死に対応して、日本を守ってくださった方々に感謝をすべきだった。

それが私の感想です。

Netflix「THE DAYS」はどこまでが実話なのか

毎回、オープニングに事実に基づくストーリーとテロップが出ます。

ノンフィクション作家の門田隆将さんの「死の淵を見た男ー吉田昌郎と福島第一原発」を原案とし、「事故調査報告書」と「吉田調査」を軸に膨大な資料から取捨選択をしていったそうです。

実際には複数人の関係者の証言をまとめたキャラクターを作るなど、登場人物の整理をしましたが、誇張や歪曲しないようにし、美談や英雄譚にはしないと決めていたそうです。

ストーリーは実話?

「THE DAYS」は、元フジテレビ社員で「コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-」や「白い巨塔」などを手がけた増本淳さんが、被災地のボランティアに従事した経験から企画しました。独自に物語を書いていくにつれ、当事者の声を聞きたいという思いが強まり、ノンフィクション作家の門田隆将さんに協力を求め脚本を書き進めたそうです。

増本さんがフジテレビ時代から実践してきたのが、エンターテイメントと社会性の融合だそうです。どちらかに寄ってしまうと、視聴者が興味を持たなかったり、脚色しすぎてしまっても嘘になってしまうようです。

門田さんの入念な取材と、増本さんのフジテレビ時代に培われたバランス感覚が、この作品のリアリティが視聴者の心に訴えかける作品になったと言えます。

「死の淵を見た男ー吉田昌郎と福島第一原発」が原案

ノンフィクション作家の門田隆将さんが実際に対処に当たった人々に徹底的にインタビューをして、まとめたのが「死の淵を見た男ー吉田昌郎と福島第一原発」(角川文庫刊)です。門田さんは他にも「記者たちは海に向かった 津波と放射能と福島民友新聞」といった震災関連を入念に取材しています。

キャストは実在する人物?

事実を基に制作をされているので、吉田所長を初めとし、当時の政府や原子力安全・保安員の方など、ニュースで見た記憶がある面々が登場してきます。

吉田昌郎さん (福島第一原発 所長)

「吉田さんとなら一緒に死ねる、と思っていた」「所長が吉田さんじゃなかったら、事故の拡大は防げなかったと思う」

作業にあたった所員の方々は語ったそうです。自分の命をかけて放射能汚染された突入する時、心が通い合っていない上司の命令では、決死の突入をすることはできなかったはずです。

社内の評価は「豪快」「親分肌」、部下思いのため現場の信望は厚く、おおらかで偉ぶることのない性格で、部下の社員のみならず、下請け企業の作業員からも人望があったそうです。

菅直人さん(内閣総理大臣)

ドラマで「俺の質問にだけ答えろ!」と苛立ちをあらわにすることもあった内閣総理大臣ですが、関係者の取材により実際の菅直人元総理も同じように高圧的であったようです。映画「Fukushima 50」でも怒鳴り散らしていたので実際にそうだったのではないでしょうか。(映画公開時のご本人の感想はリアリティがあって、別に気にならなかったとのことです)

その他、原子力安全委員会の斑目委員長が、頭をかかえて呆然としていたという関係者の話があるようで、取材に基づいたシーンはいくつも登場します。ドラマのキャラクターとしてだけではなく、実際の人物に近い描写であったようです。

また、実際には複数の証言だったのを、視聴者が混乱しないように組み合わせて作り上げたキャラクターもいるようです。

吉田所長のその後

事故後、体調不良でありながら、4号機の補強工事に従事していましたが、食道癌が発見され、2011年12月に病気療養のため、所長職を退任し、本店の執行役員に移動となりました(被爆との因果関係は否定されましたが、強いストレスの影響は否定できないとの可能性を指摘されています)

同時期に東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会(政府事故調)は13回、延べ28時間あまりにわたって吉田さんに聞き取り調査を行い、「聴取結果書」を取りまとめています。

その後、2012年には福島原発告訴団が東電役員など33人を業務上過失致死傷と公害犯罪処罰法違反の疑いで刑事告訴しましたが、吉田さんも含まれていました。

吉田さんは治療のかたわら、原発事故の回顧録を執筆していましたが、2013年7月8日に容体悪化、翌9日に食道癌のため、死去されました。58歳でした。

告別式には安倍晋三内閣総理大臣(当時)、菅直人元総理、海江田万里民主党代表など、1,050人が参列し吉田さんの死を悼みました。

廣瀬東京電力社長は「事故拡大の阻止に死力を尽くして当たられました。吉田さんが福島の地と人々を守ろうと、身をもって示した電力マンの責任と誇りを深く胸に刻みます」と追悼の辞を述べました。

吉田さんへの長時間インタビューをした門田隆将さん曰く、「国家の死の淵で戦い、戦死した男」だそうです。

2014年5月、吉田さんの調書を朝日新聞が入手し、これを「吉田調書」と名づけ、「所長命令に違反、原発撤退」と報道しました。しかし、これは「事実を曲げた報道」として朝日新聞が謝罪、撤回をすることになります。吉田さんは生前、調書の内容を非公開にしてほしいと希望していました。しかし断片的に取り上げられた記事が一人歩きし、結果、吉田さんの意思に反することになるのではという配慮が日本政府からされ公開されることになり、朝日新聞は謝罪に追い込まれることになりました。

「THE DAYS」でもマスコミのあり方などが問われるシーンがあり、またこのような現実にあった報道などの影響、もしくは映画やドキュメンタリーで詳細が明らかになるにつれ吉田さんの評価も変化しています。

Fukushima 50との比較

タイトルFukushima 50    フクシマフィフティ
公開日2020年3月6日
上映時間122分
監督若松節朗
原作門田隆将 「死の淵を見た男ー吉田昌郎と福島第一原発」
キャスト渡辺謙
佐藤浩一
緒方直人
吉岡秀隆
安田成美
佐野史郎

同じ題材で2020年に公開された映画「Fukushima 50」があります。

「THE DAYS」と同じく門田隆将さんの「死の淵を見た男ー吉田昌郎と福島第一原発」が原作となっています。

こちらは2時間の映画ということもあり、細かい描写は難しかったのではという印象です。また、いくらか劇的な演出もされているので題材は重いけれども、エンターテイメントの側面を残しています。

第44回日本アカデミー賞では最優秀監督賞を筆頭に5つの最優秀賞を受賞しています。

しかしながら事象は事実に即しているものの、東電側の責任、総理大臣の描き方、特攻隊を彷彿とさせる表現など、描き方に疑問が残るという評価も一部ではあります。

現在、Netflixで配信中です。「THE DAYS」と見比べてみるのも良いのではないでしょうか?同じ題材でも、描き方で印象が異なるというのも面白いです。(総理のキレっぷりは共通してます)

THE DAYSは日本人なら観るべき作品

あの日々はなんだったのか、いや過去形は相応しくない。あの日々は何なのか。

冒頭で吉田所長がつぶやいたセリフです。

視聴した多くの日本人が、忘れてはならないと心に誓ったと思います。

残念ながら、2023年現在も福島第一原発事故は終息しておらず、廃炉作業は続いています。

エンターテイメントでありながら、私たちにエネルギー問題と、「明るい未来」とは何かを強烈に問いかけるドラマでした。

まとめ
  • 実力派俳優が揃い、見応えのあるドラマになっている
  • 吉田所長は実在し、部下想いだった
  • 日本人なら観るべき作品と感じる人が多い

1 COMMENT

アバター 匿名

当時の民主長政権の杜撰な対応も克明に描かれていますか?
真実の物語であるなら絶対に入れておかねばならない要素なのですが。

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